★所在地:奈良市山陵町御陵前 ★墳丘:円墳(径50m、高さ7m)幅13mの周濠と幅28mの外堤を持つ。2段築成。墳丘2段目裾に朝顔形埴輪を含む鰭付円筒埴輪列が一部検出されている。 ★埋葬施設:主体部は南北方向に上面で8m×9m、深さ2mの墓壙で基底部に小石を厚さ0.25m前後敷き、この上を厚さ約1mの粘土で覆い更にその上にベンガラに浸した平織の布を敷いたあと中央部に朱塗りの割竹式木棺を安置している。木棺の外側に幅約0.7mの遺物床と称する段があり副葬品の一部が置かれていた。また木棺の北側に隣接して東西1.15m、南北0.65mの副室が未盗掘の状態で見つかり石製合子はじめ貴重な遺物が検出された。埋葬施設は他に墳丘斜面から1基、外堤上の3基の埴輪転用棺が検出されている。 (調査時には既に過去の盗掘で墓壙の南辺全てと東辺の約2/3が破壊されていた) ★棺:※割竹形木棺(調査時には幅0.6m、長さ1.3m程度しか残存してなかったが副葬列の長さから元々4m以上あったと思われる。) ★出土遺物:棺内→碧玉製石釧片10点(完形1、破片9) 副室(棺北側)→仿製鏡9枚(内行花文鏡3面、獣形鏡5面、変形文鏡1面)石製合子2、つぼ形石製品。 遺物床→北遺物床で鉄斧9、クワ刃先9、鉄鎌10、 西辺で直刀27、剣形鉄器85、刀子2、 東辺で剣形鉄器25 ★築造年代:4世紀末〜5世紀初頭 ★発掘調査:1965年〜1966年(墳丘部)1972年(外堤部) 県教育委員会、橿原考古学研究所 ★被葬者:不明 ※割竹式木棺は太い丸太を縦に二つ割りし中を刳りぬき遺体を納める空洞部分を作っている。 (竹の一節分を縦割りにした形を連想させるところからついた名前である。) 特記事項 @普通よく見られる粘土槨の場合、棺の周辺に接して副葬品を置くか棺の左右の粘土を厚く延ばしてその上に並べるか別途、副室を設けるかの方法をとるがマエ塚古墳の場合は棺から1m以上隔てて一段高い(約20p)平坦面を設け(遺物床と称す)副葬品を置くと共に副室も設けいずれも厚い粘土で被膜するという非常に丁寧な手の込んだ構造となっている。 A未盗掘の副室から出土した石製の合子は碧玉という淡緑色の石で作られた高さ8p、最大径が7.4pの小さな古代の芳香剤入れ?と言われているものであるが蓋の部分に今も朱色の紐の鮮やかな痕跡が残っており古代のロマンを引き立ててくれる非常に貴重な遺物である。 B主体部以外に4箇所に埴輪円筒棺の埋葬施設があった。 見学記 おすすめ度 ![]() マエ塚古墳はこれだけ貴重な古墳でありながら調査終了後墳丘は削平され宅地となり今は見る影もなくわずかに外堤の一部と今は道路となっている周濠にその面影を残すのみとなっています。従って見学時には多少の予備知識を持ち自分の中でイメージをふくらませながら僅かに残る外堤の一部や周濠跡の道路、あるいは未だ多少高まりを残す宅地を見てかっての大円墳を思い起こすしかありません。せめて粘土槨の残りのよかった断面位は剥ぎとって保管すべきだったと思えてなりません。これに加えせっかく見つかった珍しい朱色の紐の鮮やかな痕跡が残る石製合子等の副葬品は東京国立博物館が保管しておりマエ塚古墳をしのぶ術さえない状況で今となってはここに古墳が有ったことさえ忘れ去られようとしているのが残念でなりません。 【参考文献】 ・奈良県遺跡地図 ・奈良の古代遺跡(北部) ・奈良市史 |
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宅地造成の為に更なる破壊が進んだ悲劇の古墳だということですね。碧玉の石製合子はできれば奈良県内で拝見したかった遺物のひとつでありましたが、それでもいつかはこの目で確かめにいきたいと思っております。わかりやすい解説にうなずくばかり。ありがとうございます! |
風香 2010/08/12 20:22 |
風香さんコメントありがとうございます。外堤をいれると100mにも達する達する大円墳で4世紀末頃から20世紀まで持ちこたえてきたのに昭和の時代にあっさり削平されてしまいました。 ・・・悲しい事です。 |
とし坊 2010/08/13 00:28 |
拝見させていただきました。 |
玉緒 2010/08/14 15:35 |
玉緒さん、コメントありがとうございます! |
とし坊 2010/08/14 19:49 |
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玉緒 2010/08/15 14:43 |
玉緒さん |
とし坊 2010/08/16 09:22 |
長く書いては失礼と思いましたが、大谷石のことを書いてくださったので・・。 |
玉緒 2010/08/17 02:59 |
玉緒さん |
とし坊 2010/08/17 18:38 |
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